【日本の英語教育の歴史的な背景】
江戸時代、日本は外国との交流を禁じる鎖国を続けてきました。鎖国の期間は215年もありその期間は英語を話す必要性もなければ教育の機会もほとんどありませんでした。
英語教育にとって大きな転機は明治維新になってからです。明治政府はアメリカやイギリスを手本に近代化を進めるために英語を話せる人材を育成する必要がでてきました。学校制度を確立し外国語としての英語教育が本格的に始まりました。
しかし大正時代、昭和初期になると日本は英米との対立が激化すると再び英語を学ぶ機運は下がっていきました。さらに太平洋戦争に突入すると英語は敵国語として学ぶことや話すことさえ禁じられた時代となりました。
第二次世界大戦後、アメリカ占領下での教育改革が進み再び英語を学ぶ環境は復活していきました。戦後の高度経済成長を支える労働者に求められるていたことは「独創性」より「決まられたことを正確に行うこと」を重視されてきました。これが学校教育にも浸透し「知識詰め込み型教育」の生まれる原因にもなってきました。
【日本の英語教育の根本的な課題】
本来、英語教育とは外国人とのコミュニケーションを通じて自分のスキルを高め人生を豊かにしていくべきものです。しかし残念ながら英語教育を受けている学生の99%以上は「受験」のためではないでしょうか。
大学入試には以前から共通一次、センター試験、共通テストといった50万人以上が同じ試験をうける制度があります。これらは迅速に正確な採点をするために選択肢を選ぶマークシート方式となっています。そのため英語の試験は「読む」「書く」「聞く」の問題が中心となります。このようなテストで高得点をとるためには知識詰め込み型の英語教育が効果的であるため長年、日本の英語教育の大きな課題になってきました。
それは日本の英語教育を受けていたら「話す」ことがいつまでたってもできないからです。
【これからの日本の英語教育の展望】
これらの課題をうけて文部科学省は2025年以降の大学入学共通テストに民間の英語資格試験の導入を進めていましたがこういった民間英語資格試験(英検、GTEC、ケンブリッジ英語検定、TEAP、TEAP CBT、IELTS、TOEFL iBT)の受験料の負担や試験実施会場の地域的な偏りといった教育の機会の公平性に批判が集まりこの構想は撤回となりました。
民間英語資格試験においては「話す」技能もカバーしているため入試改革の大きな目玉でもあったがやはり現実的にはなかなか困難であったということが改めて浮き彫りになりました。
ただし新学習指導要領により2020年から始まった小学校の英語授業必修化ですがこちらは従来の「読む」「書く」に偏重せず「話す」「聞く」技能にも力を入れています。特に小学校3年生、4年生で行われる授業は「話す」「聞く」の技能に特化しています。
英語教育の出口であった「大学受験」は現在も「話す」技能についてはカバーされていませんが入口である「小学校での英語授業必修化」では「話す」技能は大きなウエイトを占めてきます。間違いなく「話す」技能を今後、どうやって伸ばしていくか、これが今後の英語教育の重要なテーマではないかと思います。
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